出発の朝、結局はあまりお祭りらしい何かは成し遂げず、ほとんどの人が寝静まっている中でテントを片付けてバイクへと積み込む。そこそこ山奥にあるからか涼しくて過ごしやすい。そして多分バイクで走ると寒い。割とカッパを上に羽織って走るのでちょうどいいのだが、止まるとめちゃくちゃ暑い。直射日光を受けると尚更である。今日はそんな日になりそうだった。太陽は照っているが今いる林間は涼しい。簡単に言うとちょっと面倒くさい。
でもやっぱり天気がいいとテンションも上がる。出発してからがっつり晴れているのは今日が初であった。奈良のお店まではおよそ130km。5時間くらいで着くだろうか。とにかくお昼頃までに到着することを目標にバイクを転がし始める。下り坂の山道を慎重に走る。川のせせらぎと鳥の声に原動機のエンジン音を混じらせて木漏れ日の差す林道を抜けていく。豊かな自然に囲まれた静かな集落に、朝から少しの騒音を申し訳なく思いつつ。そんな山の中、少し迷った。僕は割と方向音痴だと思う。感覚に従うとあんまり当てにならず結構違う方向へ行ってしまう。今回もなんとなく道を走るうちに、森が深くなってきたことに違和感を感じてナビを見返すと全然違うルートに入っていた。しかも電波が入らない。泣く泣く集落の辺りまで引き返し、ナビを再起動して道を探ると分かれ道で間違えたようである。まあ綺麗な道を見れたのだから寄り道にも価値があったさ、なんて言い訳と一理あることをボソボソ呟きながらまた山を降った。
琵琶湖をチラ見して、京都を通り抜けてひたすら走った。休みなくぶっ続けである。停車した際にペットボトルに汲んでおいた川の水をグビグビと飲みながら、奈良に着くまでは走るか〜なんて考えてひたすら進んだ。お陰様で奈良に着くまでは写真などない。本当に、なんでか知らないけど、次のコンビニは入ろう!とか思っていたのに、まあいいか、で走り抜けていることが多い。アホなのかもしれない。結構休むのが下手である。俺はまだ平気だなってするりと休憩スポットを無視することが多い。反省したほうがいいような気もするし、長所でもあるのかもしれない。少しずつでも前に進み続けることは人生でも旅でも大事だと思っている。
そんなこんなでお店に着く直前になって一応連絡とかを確認するためにコンビニに立ち寄った。マジで直前というか、むしろ一回下見して場所を確かめた後にコンビニに行ったくらいである。休憩もせずに気づいたら到着してしまったと言うのが正しい。でもちょうど前にこのくらいに着くと予想していた時間だった。コンビニでトイレを済まし、アイスコーヒーをグビグビと飲んだ後、お店へと向かう。
情緒あふれる商店街の一角にあるこちらのお店。カリー事変さん。ここのオーナーご夫婦は一応ビジネスパートナーという形でキャンプ場の時にもお世話になったし、前にやっていた別のお店でアルバイトしていたこともあって、息子さんとかとも遊んだりしていた。このお店に来るのは初めてだし、会うのも2年以上ぶりだと思う。がっつり仕事中なのにお邪魔してしまうのは申し訳なかったけれど、せっかく西日本に行くならということで立ち寄った。
めちゃくちゃ美しいスープカレーだった。オシャである。別味のカレーで味変をしたり、風味豊かなトッピングで味変したりと飽きさせないこだわり。まずはそのまま一口。珍しい、出汁の効いたカレーだ。一口目から今まで味わったことのなかった新感覚である。味は言わずもがなで美味い。もちろんライスを浸しても美味い。肉も美味い。美味い美味い。煉獄さんじゃないけど、美味いばっかり言っていた。いろんな味も楽しめて、食感も楽しい。スパイスの効いたクラフトコーラもさっぱりしていてすっきりする。新しいカレー体験だった。本当に美味しかったー。また食べたい。ごちそうさまでした。
丁寧に全ての味を味わい尽くした後、オーナーの奥様と少しだけお話もできた。忙しそうだったけれど、店内が少し落ち着いたタイミングで。オーナーは今日は来れないらしく再会できなかった。残念。色々と近況報告やら旅の話やらこれからの話やらカレーの話やら奈良の話まで短い時間ではあったけれど行けてよかった。なんとお土産に冷凍したカレーもいくつか頂いてしまった。炎天下でクーラーボックスなんかもないので心配ではあるが、まあ、早めに食べれば多分大丈夫なはず…ということでありがたく頂いた。とてもありがたい。こんな美味しいカレーがまた食べれるとは幸せである。なんと言っても俺の好きな食べ物ランキング総合部門1位は何を隠そうカレーなのだ。
これから奈良で寄るところなども相談し、名残惜しくも出発する。今日は基本的に奈良周辺を観光して、なるべく兵庫の近くあたりで寝床を探すことにした。明日は淡路島に乗り込む予定である。
肝心の奈良観光だが、長くなりすぎるのでパパッと行こうと思う。面倒くさくなってしま
まずはカレー事変からほど近いあたりでいくつか観光名所を探った。この辺りは聞いた話によると飛鳥時代の歴史的な建造物が多いようだ。飛鳥時代といえば聖徳太子などの暮らした時代。その聖徳太子ゆかりの地もたくさんあった。僕は聖徳太子という人物が結構好きである。本当に一人なのかとか実在しないんじゃないかとかその辺は置いておいて、仏教とうまく折り合いをつけて深く学んでいるし、冠位十二階で世襲から才能を重視したり、初の憲法的なものとして十七条憲法を制定したり、隋とも交易をしているし、とても有能で先進的な視野の広い人物だったんだと思う。かっこいい。「世間虚仮。唯仏是真。」なんて悟ってないと言えないだろう。日本で最も紙幣の顔に選ばれている人物だというのも納得である。
中学の修学旅行ぶりに訪れた奈良であったが、見どころも多くて楽しめた。歴史を学びながら自由に散策するのは本当に楽しい。想いをはせる時間はとても愛しい。鹿は可愛い。ただ、お金をケチっていたので、法隆寺だとか有名なスポットは拝観料が高いからと入らなかった。外側から写真だけパシャリ。時間とお金に余裕がある時にまた訪れたい。
色々と回った後の夕方には大阪あたりの山道で野宿をすることにした。ちょうどいいベンチがあったのでそこに寝袋を敷いて寝ることにする。夕飯は冷凍のカレーを温めて頂いた。ここもほとんど電波がないので、とにかく寝る。誰か朝早く登ってこないとも限らない。朝イチで出発しようと心に決めて夜更けを待たずに僕は眠りに落ちた。
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