人間の章

今回は「人間の章」です!
「人間」は語源としては文字通り人と人との間を指し、世間や世界のことも意味しました。
というわけでここでは社会的動物である私たちの関係性(コミュニケーション、共同体)について考えていきます。

人間(関係)について

『「人」という字は人と人が支えあってできている。』

という金八先生の言葉ではないですが、人は関係性の中で生きています。
どれだけ一人で生きようとしても、必ず誰かには支えられているものです。
赤ん坊はどうしたって一人で生きることはできません。
あなたが持っているもの、食べているもの、全てを自分で生み出したとは言えないでしょう。
生きている以上、関わり合いは生まれますし、すでにどれだけの人と自分が関わっているか想像も難しいです。

「六次の隔たり」という言葉があります。
知り合いに知り合いを紹介してもらいその知り合いにも…と続けていくと7人目でどんな人間とも繋がれるというものです。
世間は狭いと言いますが、あながち嘘ではないのかもしれません。
7人目にはどんな人とも繋がれるんですから、自分という存在がものすごく入り組んだネットワークの中にいることがわかります。

また、関係性が幸福感に大きく影響を及ぼすこともさまざまな研究で言われています(研究というか経験的にもそうではないでしょうか?)。三大心理学者の一人アドラーは「人間の悩みは全て対人関係の悩みである」とまで言っていますが、幸福も不幸も人間関係に大きな影響を受けることは間違いありません。

良好な人間関係を築き、集団で生きていくことは遺伝子に刻まれた本能とも言えます。
周囲に溶け込めず共同体から追い出されてしまうと、当然生き残って子孫を残すことはできませんし、遺伝子も淘汰されてきたでしょう。
現代で孤独や不安を感じる人が増えているのは、周囲との関係性が希薄になり、遺伝子から「このままじゃお前も子孫も生き残れないぞ!」というアラート受け取っているからです。

ではこの現代で人間関係をどう築いていくのか、次はコミュニケーションについて考えていきましょう!

コミュニケーションについて

コミュニケーションと一口に言っても大きくは、
言語を使ったものと非言語のコミュニケーションがあります。

しかし根本にあるのは、「このコミュニケーションを通じて相手とどんな関係性を築きたいのか」という目的です。そして、良好な人間関係を築くという目的を仮定して話を進めると(良好でない人間関係を望む人はあまり多くはないと思いますので)、相手に関心を持って観察と共感をしながら自分の意見もしっかりと伝えることが重要になってきます。そして、そのための大前提が相手に愛情(好意や敬意)を持つことです。逆に言えば相手に愛を持つことさえできれば自然と相手に共感し、より良い関係性を築くための言動や行動ができると言えます。

愛は技術であるとエーリッヒ・フロムも著書『愛するということ』で語っていますが、愛を持って接することも自分から能動的に選択していくことなのです。愛を掘り下げるとここだけでは終わりがなさそうなので深くは語りませんが、前提として愛を持てる努力をしましょう!(僕も頑張ります)

非言語コミュニケーション

引用元:https://schoo.jp/biz/column/617

「メラビアンの法則」というのを聞いたことがある人も多いと思います。
人は受け取った情報に矛盾があった場合に視覚55%、聴覚33%、言語7%の順で信用するというものです。これは別に人は見た目が9割!と言った話ではないので注意してください。あくまで矛盾があった場合です。例えば、表情が暗いのに明るい話をされてもその話は信用できませんよね。

逆に言うと、情報の中でより説得力を持つのは言葉よりもボディランゲージなどの非言語コミュニケーションということです。これは考えてみれば当然と言いますか、原始時代などは相手が敵か味方かを見た目で一瞬で判断しなくては命取りになる場面も多かったでしょう。接するとしても言語自体が通じないこともあったでしょうし、その場合も相手を信頼できるのかは非言語のコミュニケーションに大きく依存していたはずです。言語の発明自体も一説では10万年ほど前と、人類の歴史からみれば比較的最近の出来事。進化の過程から見れば相手の仕草などに重きを置いているのは当然ですし、観察できる能力もそちらの方が優れているでしょう。

いくら言葉で取り繕っても本音は仕草や行動に出てしまいますし、相手にも違和感は伝わるもの。
普段から言行一致で生きたいですね。

言語コミュニケーション

とは言ったものの言語コミュニケーションは現代においてより重要度が増してきました。オンライン上でのやりとりなど直接会う以外にも人とコミュニケーションを取る機会も増えたのはもちろん、グローバル化やインターネットの普及に伴って多様な価値観や文化に触れることは当たり前になってきています。原始時代であれば、見た目やボディランゲージで相手が何者かを判断することは合理的だったでしょうが、全く違う文化圏の人と出会うようになった現代では非合理的でしょう。相手の文化では敬意を表したつもりの行為だったとしても、こちらは侮辱されたと感じるかもしれません。お互い本当は友好的にしたいだけだったとしても意図を理解しなければ敵対してしまうことがありうるのです。

そのため目的を持ちながらも先入観は持たずに相手への愛情を前提として話し合う技術が重要です。本来の目的を見失ってその場の感情を優先してしまえば、脱線してどちらもが求めていない方向へ会話が進む可能性があります。
感じたことは大事にしながらも、建設的なコミュニケーションを築くための一つの体系化されたものとして、ここでは「NVC」というコミュニケーション手法を紹介します。

NVCとは”Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション”の略称です。相手と自分の意見や感情を伝え合いながらも、お互いに攻撃的にならないようなコミュニケーションのこととも言えます。
詳しく語ることはここでは控えますが、具体的なステップとしては「①観察⇨②感情⇨③ ニーズ⇨④リクエスト」の順で自分の意見を伝えます。相手に対しても相手の立場に立って同様のステップから感情とニーズを推測し本当は何を求めているのかを確認していきます。(詳しくはぜひ本書を手に取ってみてください!)

①まず起こった”事実”を観察します。相手の言動や表情をありのままに捉え、感情やレッテルは乗せずに一歩引いて観察しましょう。
例:彼は話を遮って「お前はバカかよ!」と呆れた表情で言った。

②自分に湧いてきた感情は何かを言語化します。
例:怒り、ムカつき、悲しみ、苦しみ、驚き等の感情が浮かんだ。

③自分が何を求めていたのか、大切にしたかった価値観は何か(ニーズ)を明確にします。感情が生まれるのはニーズが満たされた時(ポジティブ)か、満たされなかった時(ネガティブ)です。
例:対等な関係、気遣い、思いやり、共感、楽しい会話を求めていたが満たされず、さっきのような感情が浮かんだ。

④上記プロセスを開示して、相手に自分の要求を伝えます。
例:「いきなりバカかよと言われて非常に驚いたし、怒りや悲しみも感じたよ。なぜなら、僕は君と対等で楽しい時間を過ごしたかったし、もっと思いやりのある言葉がけや共感を求めていたんだ。だから僕をバカだと決めつけずに、最後まで話を聞いてほしい。その上でもう少し思いやりのある言葉をかけてくれたら嬉しいな。」

多少イメージがついたでしょうか?
感情的にならずにお互いがどう感じ、何を求めているのかを明確にすることです。相手の価値観やニーズが分かれば共感や理解も深まるでしょう。その上でお互いを尊重し、コミュニケーションの目的を共有できれば、自ずと建設的な会話になります。

マイナスの印象を抱いていた相手に対しても、ニーズや感情を持つ人間であり、理解や共感できる存在だと分かれば対立ではなく助け合う道が必ず見つかるはずです。人類共通の課題を多く抱える現代社会では、多様性を保ちながらも大きな目的に共に向かえるような協力関係を築くことが求められています。そんな大きすぎる視点でなくとも、会社でも家族でも友人でもそういった関係性は重要なので、NVCにも囚われすぎることなく、最善を目指す道を常に探っていきたいですね。

共同体について

二人以上の人間が関わり合えば、それは社会と呼ぶことができます。
ここではより広い意味で”共同体”という言葉を使っていますが、なんでも良いです(投げやり)。
群れをつくる動物や社会性昆虫など、共同体を形作る生物は人間以外にも存在しますが、人間はより多様な形態でまとまります。認知革命により共同幻想を獲得したサピエンスは、さまざまなストーリー(神話、イデオロギー、宗教、文化)を共有して同じ価値観を持った共同体を形成していきました。
そんな共同体の価値観は発達していくものだとして段階を表したのが上の図です。

ここでは『インテグラル理論』『ティール組織』といった本の概念を拝借しています(ここではティール組織の発達段階)。簡単に言えば組織(共同体)は5つの段階で変化していくというものです。詳しくは本を読んでいただきたいのですが、色で表した「RED」「AMBER」「ORANGE」「GREEN」「TEAL」の順に進化していくと仮定しています。軽くそれぞれがどんな組織なのか解説しますが、重要なのは、下の段階が劣っていてティールが最も優れているというわけでは無いということです。状況に応じて最善も変わります。それを念頭に置きながら読んでいただけたら幸いです。

RED(衝動型)

「オオカミの群れ」と比喩されている段階で、原始時代に生まれた組織形態です。
現在で言うとマフィアやギャングなどを思い浮かべてもらえればわかりやすいかもしれません。
圧倒的個人であるボスを筆頭に、暴力的な支配によって組織をコントロールします。
短期的利益に焦点が当たっているため、短絡的・衝動的な行動を起こしやすいのが特徴です。

AMBER(順応型)

ヒエラルキー型・ピラミッド型の組織です。軍隊が典型ですが、上下関係がはっきりしており秩序を重んじます。上の命令やルールに順応し、組織における役割を全うすることが求められるため、自発的なアイデアなどの創造性が発揮されにくく、イノベーションが起きにくい組織形態です。絶対的な規律にそった安定した運営は可能ですが、現代では特定の場面(緊急時で素早い意思決定と行動が必要な時など)以外では機能しにくいでしょう。

ORANGE(達成型)

基本的にはAMBERと同じように階層構造を持ちつつも、個人が成果を挙げることで昇進できるなど、変化に対応できる組織形態です。
効率的な目標達成を目的としているため、効率のみを重視したり数値管理を徹底するなど、「機械」と比喩されます。日本の多くの企業はこの段階と言えるかもしれません。

GREEN(多元型)

個人の価値観などを重視し、より主体性を持って行動できる組織形態です。家族と表される通り、意思決定のプロセスもボトムアップ型でコンセンサス(総意)を求めるのが特徴で、リーダーやマネージャーは、個人が主体性を持って行動できるような環境づくりやサポートに重きを置きます。しかしながら、多様性を重んじるあまり意思決定が遅くなりすぎることも多く、実際の決定権限はマネジメント側が持っていることがほとんどのようです。

TEAL(進化型)

ティール組織ではリーダーなどは存在せず、個人の主体性に現場を一任しています。それぞれが組織の目的にとって最善の選択は何かを常に考えて行動するからです。「生命体」と表される通り、有機的で柔軟にその時の状況に応じてメンバーが意思決定を行います。個人の自己実現と組織の使命が重なっており、組織の目的に沿った行動が同時に自分の志にとって最善の行動になるのです。つまり志を共有する個人が集まって対等な関係を築き、主体的に行動し続ける共同体がティール組織です。

最後に

引用元の概念なのでそのまま使いましたが、進化や発達という言葉は語弊を生むと思います。複雑系であるこの世界で起きうる結果は本来的に予測できません。これが正しいなどという正解はなく、どんな意思決定の形や組織形態が最善かはわかりようがないのです。間違っていると思われた選択が必ずしも悪い結果になるとは限りません。偏った価値観に捉われず、柔軟に組織自体の形も変えていけることが重要で、選択肢として持ちながらも、常により良い手段を考え続けることはやめてはいけないと思います。

まとめ

今回は「人間の章」ということで、人間関係について考えてきました。
紹介した概念はあくまで一つの例に過ぎず、この記事自体も僕という一つのフィルターを通した情報なので、より多くの視点や知見を取り込んで本質的な考え方などをこれからも探っていけたらと思います。
そんな関係を築いていけたら何よりハッピーなので、ぜひ積極的にご意見をいただけたら嬉しいです!
最後までお読みいただきありがとうございました!

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