飲まず食わずの4日間。インディアンの儀式「ビジョンクエスト」に参加して。

ビジョンクエストについて

10月4日〜10月7日の4日間で「ビジョンクエスト」というものに参加させて頂きました。

「ビジョンクエスト」というのはインディアン(ネイティブアメリカン)の儀式の一つ。

部族などによってやり方は様々あるようですが、4日の間、食や水を完全に断って、夢(ビジョン)から啓示を受けるために独り自然に籠るものです。

半径2mほどの場所を聖域として選び、そこから出ることなくひたすらビジョンを待つ。
その間に嵐や地震や動物が来ようとも決して出ない。

もちろん電子機器は持ち込めないですし、本や書くものも持っていくことはできません。

そんなビジョンクエスト、今回は普段からめちゃくちゃお世話になっている、僕の師匠というか事業パートナーというか兄弟というか友人というか家族というか伊藤研人さんが開催してくれた、千葉の山で行った儀式に参加してきました。

研ちゃん(伊藤研人)は着物で世界を2周以上巡り、ネイティブアメリカンのいくつかの部族の元でも滞在。「サンダンス」や「スウェットロッジ」、「ビジョンクエスト」など物凄い体験をしている方で、わざわざ現地のシャーマンから許可を得て開催をしてくれました。

神聖な儀式なので、気軽には執り行えないもの。

本当にありがたいです。

参考は伊藤研人著『第七の旅』やブログに詳しくあります。
僕の記事なんかよりもよほど読む価値がありますのでぜひにご一読を。http://www.kentoitoh.com/archives/category/unitedstate/american-indian

前談にはなりますが、彼とは4年前の就活をしていた大学時代に出会い、たくさんのことを学ばせていただいています。
ここ2年ほどは一緒に”UMIKAZE”(https://umikazecamp.com/)という場所作りを千葉の南房総で行っていて、身に余る機会をいただきすぎている感覚は強いです。

本筋に戻ると、この「ビジョンクエスト」ですが、実はUMIKAZE近くの山をお借りして過去にも何度か開催しています。
毎回参加していた方の気づきや感想などを聞くと素敵なものばかりで、

「いつかは…!」

という気持ちは強かったのですが、業務などもあってなかなか機会がなく、個人的には歯痒く思っていました。

そんな中で今回は業務も一旦停止して参加させてもらうことに。
都合も合わせてもらっての開催で本当に感謝しかありません。

儀式の始まり

10月4日の朝。今回の参加者は7名で、なんとそのうちの5名が女性でした(男はひ弱になっていっているのかもしれない…反論がある人はぜひお越しください笑)。個人的には見知った顔ぶればかりでしたが、4日間過ごすための装備を整えた後に軽く自己紹介。

ちなみに僕の装備としてはこんな感じ。

  • バックパック
  • ブルーシート
  • 寝袋
  • 蚊取り線香2まき
  • マッチ2箱
  • ランサーズのTシャツ(前職の思い出でなんとなく着ていきました)
  • ユニクロのストレッチパンツ
  • 浴衣(インドで買ったシルクの布を帯にして)
  • 羽織
  • ポンチョ(雨用のではないです)
  • 結界用の麻紐
  • パロサント(聖なる香木)とホワイトセージ

正直この4日間は気温差も激しく、雨も降る予報だったのでもっと暖かい装備は必要だったなとは軽く反省しております(ブルーシートや寝袋も持たない猛者もいたので、僕はかなり充実していたかもしてませんが)。

それぞれが自分なりに装備を整え自己紹介を終えるといよいよ儀式の始まり。

”時計回り”で席についていき、火を囲んだ形で円になって座ります。

「インディアンの中で火は神聖なもの。物質でもないけれど確かに存在していて、ご先祖様や精霊と火を通して繋がっていると考えられている。だから火の前では決して嘘はつかず、素直に自分の心や言葉を出さなくてはいけないんだ。」

ガイドの研ちゃんはこの火を4日間絶やさずみんなの無事を祈ってくれます。ありがたい。
意識を整えた後に一言ずつ、この場におきたい言葉を発していきます。

”愛”
”繋がり”
”自然”
”向き合うこと”
”感謝”

それぞれが心の内から聞こえた声を言の葉として焚べていく、そんな感覚でした。

その後はみんなで”聖なるパイプ”を回し、煙草で身体を清めていきます。

ネイティブアメリカンの中で煙草、聖なるパイプは非常に重要なもの。

全てのことは”大いなる神秘”(グレートスピリット)から生まれていて、最も上にいる存在であり、立ち登っていく煙草のケムリを通してその大いなる神秘と対話することができると考えられているからです。

そしてホワイトセージも焚いて今回守ってくれる結界のための麻紐を清めていきます。

最後に全員の無事の帰還を祈り、ネイティブアメリカンに伝わる”4つの方角の歌”をみんなで歌いました。

火を囲み、木々に見守られ、晴れ空の下で鳥たちも一緒に歌ってくれているような、そんな瞬間。

とても神聖で心地よい気分でした。

いよいよビジョンクエストの舞台である、原生林の残る山へ出発。
おおよそ歩いて1時間ほどでしょうか。立地としても環境としてもこれ以上ない場所。この山を借りることができたのにもストーリーがあるのですがそれはまた別の機会に。

4日間にわたる、飲まず食わずの心の旅路が始まります。
不安や恐怖が無いと言ったら嘘になりますが、久々にとてもワクワクする瞬間であったことは間違いありません(ひょっとしたら僕は変人なのだろうか…?)。

感じたことのない感情を味わいたい、ビジョンを見たい、自分を試したい、でも4日も水飲まないって大丈夫なんだろうか?などいろんな気持ちを抱えての出発でした。

出発!ガイドの研ちゃんと参加者たち。僕もかろうじて映ることが出来ていてよかった。

山の中へ ー旅の始まりー

ここからは感じたままに、エッセイというか小説的なノリでテイストを変えて書いていこうかと思います。

道なき道を進み、山の奥地へと踏みいっていく。

ガイドの研ちゃんを先頭に8人。僕はその一番後ろだ。

実は僕自身はこの山自体には何度か踏み入れたことがある。初めて奥まで開拓する時に同行したり、焚き火を囲みながらお酒を頂いたりもした。しまいには真っ暗な中、迷いながらも裸足で家まで帰ることもあった。

だが意外なことに夜を越すのは今日が初めてだ。野宿自体には対して抵抗もない。それもこの2年ほどの千葉生活で培われた成果だろう。独りで山の中にある廃屋で過ごしてきた経験が活かされたわけだ。

しかし。

「4日もの間、水を摂取しないというのは大丈夫なんだろうか?」

その不安だけはこのワイルドな生活の中でも想像したこともないものだった。

実際のところ、断食であれば勝手に一週間やったこともあるし(記事はこちら)、普段からプチ断食もよくやっている。瞑想を1日10時間×10日間というプログラムもやったことがあるし(記事拙著)、その手のことには自分にしては珍しく自信がある。

どちらもさほど苦労せず楽しくやれたのが僕の変態性なのかもしれない。

(記事たちを書いたのは学生時代で稚拙なのでご容赦を…本はKindleでアンリミ登録者なら無料です。じゃなかったら250円なので本当に暇だったら買ってくれると飛び跳ねて喜びます。)

だがしかしである。

水を飲まないというのはどうなんだろうか。

どうせやるのだから考えても仕方がないことだと割り切りつつも不安は拭えずにいた。

この初日は気温が28度と10月にしては異常なほど暑く、山道を歩くだけで汗をかき、喉も渇きつつあったから余計に頭からは一抹の不安を取り除けない。

ただ同時にこの不安こそは最も命にとって死を近づけるものだというのも確信していたのである。

僕は考えるのをやめた。

倒れた木をくぐり、蜘蛛の巣を払い除け、ぬかるんだ地面を滑りながら進み、山の奥地に辿り着く。

立派な大木たちに見守られ、見上げれば葉が木漏れ日を揺らしている。

それぞれが選んだ場所で、4日間を過ごすことになる。

互いに姿は見えてはいけない。あくまで孤独な旅。自分や自然とひたすらに向き合う時間だ。

僕が選んだのは山の上の方にある少し盛り上がった場所。平なところもあるが少し傾斜がついており、雨が降った際にブルーシートに包まれば雨が溜まって浸水することはないだろう。

広がる景色としては、昔に誰かが植えたのであろうか、ソテツというヤシの木の一種がお行儀よく整列している姿を見られる。その上部には多少ではあるが開けた空を眺めることもできて、それ以外の方角には森が広がっている。寝床の真上には大きめの木々が連なってくれていて、雨や日差しをある程度は遮ってくれそうだ。

結界用の麻紐を周囲に巡らせ、木のそばに腰を下ろして荷解きをする。
バックパックの中からブルーシートと寝袋を取り出して敷いてみると、寝返りは打ちづらそうだがいい感じだ。今日は暑いが、明日以降は雨が降り気温もガクンと落ち込むらしい。まあ寒くなったらまた考えよう。

一旦は浴衣一枚で過ごすことにした。
ブルーシートの下にバックパックと草履を仕舞い、裸足で周りを少し歩き回ってみる。

土はぬめりとした質感に湿り気を帯びてひんやりと気持ちがいい。
枯れて落ちた葉や枝を踏むとチクチクと肌を細かく刺しながらも痛くはなく、程よく刺激してくれる。
これから共に過ごさせてもらう木々にも挨拶を済ませ、改めて座って深呼吸をする。

いよいよ始まるのだ。

どんなビジョンを見られるのか。はたまた何も見られないのか。

色々な不安と期待が入り混じった旅の始まりだ。


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