小説を出版しました!紙まで出せるのはマジ神。Amazonすごい。
この度、僭越ながら小説を出版しました!このブログでも掲載していた『海風』というタイトルでAmazonにて販売してます。話の大筋は同じですが、もともと5万文字だったのが8万文字くらいになりました。そして、かなり稚拙だった表…
この度、僭越ながら小説を出版しました!このブログでも掲載していた『海風』というタイトルでAmazonにて販売してます。話の大筋は同じですが、もともと5万文字だったのが8万文字くらいになりました。そして、かなり稚拙だった表…
温泉でかなりの時間をゆったりと過ごし、夕食も久しぶりにまともな食事をした。たった1000円の定食だったけど妙に沁みて泣きそうになり、手を合わせて「ごちそうさまでした」と呟く。「おいしかったです。」会計の時店員にそう伝える…
今日は朝から雨が降っている。テントに弾ける雨音で目を覚ましたが、そういえばろくに天気予報も確認していなかった。一応レインコートは持ってきているが、バックパックをカバーするようなものは持ち合わせていないし、傘もない。その場…
「自然こそが神だよ。」彼は言った。いや、僕はそう思った、の方が正しいかもしれない。街中を過ぎ、林を抜け、山とも言えない山道を歩く。日光浴を楽しむ草木も、爽やかな炭酸水みたいな川も、道端で勢いよく伸びる雑草や、庭に咲く整っ…
「海だ!」僕は思わず声に出していた。やっと辿り着いた。幼少期に見た馴染みのある風景に、思い出したくもない過去も、なんでもない思い出も、たくさんの感情も同時に浮かんできて、それらを懐かしさがそっと包んでいる。故郷の海。平日…
「私が生まれたのは、ほんの最近のこと。初めて君の前に出たのはキャンプの時ね。」彼女は僕の知っている彼女ではないようだった。快活で陽気な雰囲気は失われ、口調には冷んやりとした印象を受ける。彼女も僕自身が生み出した幻想だ。頭…
「お前なんか生まれてこなきゃよかったんだ!」怒鳴り散らす声。父親はいつも不機嫌だった。人間は誰かを痛めつけることで快感を得ることもできる。古くからのDNAに刻まれた闘争本能であり、暴力は脳を刺激してアドレナリンを噴出させ…
首吊り自殺は簡単らしい。確かにロープ一本で逝けるのだからありがたい話だ。僕の部屋のアパートには天井に引っ掛けるようなとっかかりはないけれど、調べたところ、どうやらドアノブなんかで良いらしい。それに、タオルとかコードなんか…
私は駆け出していた。冷め切った部屋の空気を脱ぎ捨てたくて、生ぬるい夜の闇へと。どうしようもない虚無感が押し寄せて、身体中にまとわりついて離れない。じっとりと湿った空気のせいなのか、汗と涙のせいなのかわからないけれど、飽和…
いつもは静かなはずの夜のローカル線。今日は普段よりも華やかな雰囲気だ。着飾る人々は半数がカップルだろうか。もちろん私も浴衣を身につけている。白地に黄色い花をあしらったシンプルだけどお気に入りの一着だ。冷房の効きすぎた車内…
珈琲豆の香りが場を満たしている。窓のない地下にあるこのカフェはノスタルジーを引き出して、都会の喧騒とは一線を画した空間として独立していた。華やかな雰囲気の明るい店舗よりも何となくゆったりとした時間が流れている気がする。「…
その顔は銃を突きつけられて恐怖に青ざめている。気の弱そうな男は涙目になりながら命乞いをし、銃を突きつけた男は荒々しく問いかける。「お前のなりたかった職業はなんだ?」命乞いをしていた男は一瞬何を聞かれたのか理解できなかった…
「あのさ!」一瞬の緊張を悟らせないようにと声を掛ける。君は珍しい動物でも見るように驚きと好奇心で満ちた目で私に向き直る。「何、かな?」「もうちょっと海風を浴びてたいなって。あっちは砂浜じゃなくて岩場になってるんだけど、多…
蝉が声高に叫び、テントがうっすらと明るくなる。空が白み、もう少しで太陽が顔を覗かせるようだ。俺は寝袋から這い出して網戸のファスナーを一周させる。正確には半周くらいか。 どうやらこのキャンプ場からは日の出が見えるらしい。た…
パチパチと薪が爆ぜる音がする。 火は好きだ。ゆらめきの中に荒々しさと儚さが両立している。きっと魂が見えるとしたらこんな風に見えるだろう。そんな柄にもない言葉が心の縁で一瞬の揺らぎとして観測される。 小さい頃、家にいるのが…